海外FXの入出金って、税務署に伝わる仕組みがあるの?
気になりますよね。実は、入出金の話題でよく出てくる制度は1つではなく、役割の違う3つがあります。順番に整理していきます。
海外FXで入金や出金をしていると、「この動きは税務署からどう見えるんだろう」と考えたことがある方は多いと思います。ニュースで「国外送金」「CRS」といった言葉を見かけると、なおさらです。
この記事では、国外送金等調書・CRS・国外財産調書という3つの制度の仕組みを、条文と国税庁の案内に沿って整理します。誰が何を出す制度なのかを、順番に見ていきます。
- 3つの制度の違いと、書類や報告を出す人(金融機関か本人か)
- 国外送金等調書の対象になる「100万円を超える」送金の読み方
- CRS(共通報告基準)の仕組みと、日本の開始時期・2026年1月の改正
- 国外財産調書の「5,000万円超」「6月30日」という基準
- 確定申告との関係と、迷ったときの確認先
海外FX業者を取り巻く規制の動きは、海外FXの規制動向をまとめた記事で整理しています。この記事では、入出金と税務署の関係に絞って説明します。
海外FXの入出金と税務署|関わる3つの制度を先に整理
海外FXの入出金に関連して名前が挙がることの多い制度は、国外送金等調書、CRS、国外財産調書の3つです。似た言葉ですが、書類を出す人も、対象になるものも違います。
3制度の違いを一覧で
| 制度 | 出す人 | 内容 | 基準・時期 | 最終更新 |
|---|---|---|---|---|
| 国外送金等調書 | 金融機関が税務署長へ提出 | 国内と国外の間の送金・受領ごとの氏名・住所・金額・年月日・送金原因・相手方など | 100万円を超えるもの/為替取引を行った日(財務省令で定める日)の属する月の翌月末日まで | 26年10月 |
| CRS(共通報告基準) | 各国の金融機関が自国の税務当局へ報告 | 非居住者の口座情報(氏名・住所・居住地国・納税者番号・口座残高など) | 日本は毎年4月30日までに報告/2018年から情報交換を開始 | 26年10月 |
| 国外財産調書 | 本人(居住者)が税務署へ提出 | 国外財産の種類・数量・価額など | 12月31日の国外財産の価額合計が5,000万円を超える場合、翌年6月30日まで(非永住者を除く) | 26年10月 |
取り違えやすいのは、国外送金等調書を出すのが金融機関で、送金する本人が出すのは告知書という点です。3つのうち、本人が税務署へ提出する調書は国外財産調書だけです。国外送金等調書とCRSは金融機関が出します。
この記事の前提
3つの制度は、国外との送金、各国の金融機関が報告する口座情報、国外にある財産と、対象がそれぞれ別です。海外FX専用の制度ではありません。
個別の送金や口座が、どの制度の対象に当たるかは、取引している金融機関や税務署が判断する領域です。この記事では、制度の仕組みと、確認するときの手がかりを整理します。
国外送金等調書|100万円超の送金で金融機関が出す書類の仕組み
国外送金等調書は、国外との送金を扱った金融機関が、税務署長に提出する書類です。根拠になっているのは「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(以下、国外送金等調書提出法)です。
提出するのは金融機関|本人は告知書
調書を提出するのは、送金を取り扱った金融機関です(法第4条)。送金する本人が出すのは調書ではなく、告知書です。
告知書:国外送金や国外からの送金の受領をする人が、送金の際に金融機関へ提出する書面。氏名・住所・個人番号、送金の原因となる取引の内容などを記載し、提出時に住民票の写しなどの提示(または署名用電子証明書の送信)が必要です(法第3条)。
国外送金等調書:金融機関が、顧客の国外送金等ごとに作成し、税務署長へ提出する書類(法第4条)。
告知書の提出が不要になる場合の細かな条件は、条文で定められています。自分の送金に告知書が必要かどうかは、取引する金融機関の窓口やサイトで確かめるのが確実です。
対象の金額|100万円を超える送金
調書の対象は、金融機関が行う為替取引による、国内から国外への支払い(国外送金)と、国外から国内への支払いの受領です(法第2条)。そのうち金額が100万円を超えるものが、調書の提出対象になります。
「100万円を超える」という基準は、1つの条文に書いてあるわけではありません。法第4条が「政令で定める金額以下のものを除く」と定め、施行令第8条がその金額を100万円としています。2つを合わせて読むと、100万円以下は対象外、100万円を超えるものが対象という整理になります。
外貨で表示された金額の送金は、財務省令で定める外国為替相場で円に換算して判定します(施行令第8条第2項)。提出期限は、為替取引を行った日として財務省令で定める日の属する月の翌月末日までです。
この金額基準は、調書の提出に関する条文の話です。確定申告が必要かどうかは、国税庁が所得の金額と税額を基準に説明しています(後の章で触れます)。個別の送金が調書の対象になるかどうかは、金融機関に確認してください。
記載事項と法の目的
調書に記載する事項は、国外送金等調書提出法施行規則第10条に列挙されています。国外送金の場合の主な項目は次のとおりです。
- 顧客の氏名・住所・個人番号
- 送金の金額と年月日
- 送金の原因(告知書に記載された内容)
- 送金の相手方の氏名または名称
- 相手国名や、相手方の国外にある営業所の名称など
法第1条は、この制度の目的を「納税義務者の外国為替その他の対外取引並びに財産及び債務の国税当局による把握に資するため」、「内国税の適正な課税の確保を図ること」と定めています。記載事項の列挙は、施行規則第10条(e-Gov法令検索)で確かめられます。
銀行で送金を止められたときの注意点は、海外FXの送金トラブルを扱った記事で説明しています。
CRS(共通報告基準)|3ステップで見る口座情報の交換
CRSは、国同士で口座情報を交換するための国際的なルールです。国外送金等調書が「送金ごとの書類」なのに対し、CRSは「口座に関する情報」を扱う制度です。
CRSの仕組み|税務当局間で情報を交換
CRSは、OECDが公表した、非居住者の金融口座情報を税務当局間で自動的に交換する国際基準です。国税庁のCRSコーナーは、流れを次のように説明しています。
- 各国の金融機関等が、自国の税務当局へ、非居住者が持つ金融口座の情報を報告する
- 各国の税務当局が、租税条約等の情報交換規定に基づき、その情報を自動的に交換する
- 非居住者の居住地国の税務当局へ、その情報が提供される
日本では、国内の金融機関等が、特定の非居住者の口座情報を毎年4月30日までに所轄の税務署長へ報告します。報告を行うのは金融機関です。
報告する金融機関・対象口座・情報の範囲
国税庁のリーフレットが示している範囲を、表にまとめます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 報告する金融機関 | 預金機関(銀行・資金移動業者等)、特定保険会社(生命保険会社等)、保管機関(証券会社等)、投資事業体(信託等) |
| 報告の対象となる口座 | 預金口座、証券口座などの保管口座、キャッシュバリュー保険契約・年金保険契約、信託受益権などの投資持分 |
| 報告の対象となる情報 | 氏名・住所、居住地国、外国の納税者番号、口座の種類、口座残高、利子・配当などの年間受取総額など |
口座を開くとき、金融機関へ居住地国などを記載した届出書を出すことになっています。日本に住んでいる方も、居住地国には「日本」と記載します。
表は制度の一般的な範囲です。利用しているサービスの口座が対象口座に当たるかどうかは、その金融機関に確認してください。
日本の開始時期と2026年の改正
日本は2018年(平成30年)から情報交換を開始しています。2026年1月1日からは、改訂CRSに対応した改正法令が施行され、2027年(令和9年)以後は改正後の制度で報告・交換が行われます。
2026年1月1日は制度の始まりではなく、改訂に対応した改正法令の施行日です。改正の内容や最新の案内は、国税庁のCRSコーナーでご確認ください。
国外財産調書|5,000万円超で本人が出す書類
3つの制度のうち、本人が税務署へ提出するのは国外財産調書です。国外送金等調書やCRSと違い、金融機関ではなく自分で出す書類になります。
提出が必要になる基準
対象者:居住者(非永住者を除く)
基準:その年の12月31日において、国外財産の価額の合計額が5,000万円を超える
期限:その年の翌年6月30日まで
提出先:住所地などの所轄税務署
記載内容:国外財産の種類、数量、価額その他必要な事項
提出期限内に提出した場合の加算税の軽減など、細かな取り扱いは国税庁のリーフレットに載っています。
価額の考え方
財産の価額は、その年の12月31日の時価、または時価に準ずるものとしての見積価額で判断します。外貨で表示された財産は、同じ日の外国為替の売買相場で円に換算します。
金額の判定は、1つひとつの財産の額ではなく、国外にある財産の合計額で行います。
判定に迷ったときの確認先
海外の取引口座に預けた資金が国外財産に当たるか、5,000万円の判定にどう入るかは、国税庁の国外財産調書のFAQや、所轄の税務署、税理士に確認してください。
確定申告との関係|申告は所得の金額で考える
ここまでの3つの制度は、送金・口座・財産の情報に関する制度です。確定申告の要否は、国税庁の説明では所得の金額と税額を基準にしています。
調書の対象じゃないなら、申告もしなくていいのかな?
判断の出発点は、国税庁が説明している所得の金額と税額です。まず1年間の損益を整理するところから始めましょう。
申告の要否は所得の金額が基準
国税庁の説明(タックスアンサー No.2020)では、所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と税額を計算して確定させる手続とされています。給与を1か所から受け、その給与の全部が源泉徴収の対象になる場合は、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計が20万円を超える人などが申告の対象です(No.1900)。
国税庁の説明では、市場デリバティブ取引にも店頭デリバティブ取引にも該当しない取引の損益は、一般に雑所得として総合課税の対象です(No.1521)。申告するかどうかは、この所得の金額を軸に、年ごとに整理していきます。
申告の手順は別の記事で
海外FXの税金と確定申告の手順では、確定申告の手順をまとめています。この記事は、入出金に関わる制度の仕組みに絞っています。
入出金で迷ったときの確認先|3つのステップ
制度の仕組みが分かっても、自分のケースがどうなるかは別の問題です。迷ったときの動き方を、順番に整理します。
①送金の前に金融機関へ確認
送金に必要な書類や手続は、取引する金融機関の窓口やサイトで確かめられます。国外への送金や国外からの受領をする前に、必要な書類と手続を確認しておきましょう。
資金を国内へ戻すときの流れは、海外FXの出金手順と相談先にまとめてあります。
②1年間の入出金と損益の記録を残す
あくまで一般的な準備の例ですが、取引履歴・入出金の明細・銀行の振込記録を年ごとに保存しておく方法があります。
制度の説明ではなく、手元の記録を整えるための考え方です。何をどの形式で保存するかは、税務署や税理士に聞いておくと確実です。
③個別の事情は税務署・税理士へ
個別の送金が調書の対象になるか、口座や財産が各制度の対象に当たるか、申告が必要かどうかは、所轄の税務署や税理士に相談するのが確かな方法です。
相談するときは、②で整理した記録を手元に用意しておきましょう。
海外FXの入出金と税務署に関するよくある質問
入出金と税務署の関係について、検索でよく見かける疑問をまとめました。
- 国外送金等調書は、自分で提出するのですか?
-
いいえ。調書を提出するのは金融機関です(国外送金等調書提出法第4条)。送金する本人が出すのは、送金の際に金融機関へ提出する告知書です(同法第3条)。
- 100万円以下の送金は、国外送金等調書の対象外ですか?
-
条文は、法第4条と施行令第8条の組み合わせで「100万円を超えるもの」を調書の対象としています。個別の送金が対象かどうかは、利用する金融機関にご確認ください。確定申告が必要かどうかは、国税庁の説明では所得の金額と税額が基準です。
- CRSは2026年から始まった制度ですか?
-
日本の情報交換は2018年から始まっています。2026年1月1日は、改訂CRSに対応した改正法令が施行された日です。2027年(令和9年)以後は、改正後の制度で報告・交換が行われます。
- 国外財産調書は、海外FXを使っている人は全員出すのですか?
-
海外FXを使っているかどうかではなく、基準で決まります。提出が必要なのは、居住者(非永住者を除く)で、その年の12月31日の国外財産の価額の合計が5,000万円を超える人です。個別の口座や資金が国外財産に当たるかどうかは、国税庁のFAQや所轄の税務署でご確認ください。
まとめ|3つの制度の違いと次にやること
海外FXの入出金と税務署の関係は、3つの制度に分けて見ると、それぞれの役割が分かります。
国外送金等調書:金融機関が、100万円を超える国外送金等ごとに税務署長へ出す書類。本人が出すのは告知書です。
CRS:各国の金融機関が非居住者の口座情報を自国の税務当局へ報告し、税務当局間で交換する仕組み。日本は2018年から開始、2026年1月に改正法令が施行されました。
国外財産調書:12月31日の国外財産の合計が5,000万円を超える居住者が、翌年6月30日までに本人が税務署へ提出する調書。
確定申告:1年間の所得の金額と税額で整理します。個別の事情は税務署・税理士に相談しましょう。
制度の名前が多いと身構えてしまいますが、誰が何を出す制度かを分けて覚えておきましょう。迷ったときは、取引している金融機関と税務署が最初の相談先です。
取引の場を見直したいと考えている方には、国内で使える選択肢を整理した海外FXからの移行先ガイドがあります。
※2026年10月時点の法令・国税庁の案内に基づく内容です。制度の内容や金額基準は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁・e-Govの公式ページでご確認ください。個別の事情は、税務署や税理士にご相談ください。
参考資料

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